私は小学生を中心に英会話を教えています。でも頼まれて中学生や高校生の勉強も見ています。私のクラスにとても頭がよく、勉強ができる男の子がいます。しかし、とても感情の起伏が激しくて、毎回今日の機嫌は…?と神経をとがらせます。
今回は感情がコントロールできない子供たちについて考えてみました。
目次
1.幼児期の感情は親子関係が重要!
1-1.すぐに感情をあらわにする教室の生徒K君!
わたしは、専門家ではないので知り合いのお医者さまや学校カウンセラーの先生から聞いたことを参考にしながら書きたいと思います。
幼児期のK君
私の教室に、2つ違いのお姉ちゃんと一緒に入会したK君。4歳だったので年中さんのクラスに入ってきました。最初から難しい子供でした。カード遊びなどで負けると部屋の隅に行って最後まで出てきません。一度すねると簡単に感情がおさまらないらしく、しつこくするとキレてものを投げたり、ほかの子供に暴力をふるうこともありました。
始めはどうしようかと悩みました、すねたときは「kちゃん、一緒にやりたくなったらここにきてね」と言って少し放置します。落ち着いたころ、「kちゃんの好きな○○するよ」と声を掛けます。興奮がおさまると戻ってくることもありました。
でも・・・最後まで参加しないことも多々ありました
知り合いのスクールカウンセラーの先生に、軽い相談のつもりでK君の話をすると「発達障害かも…」と言われました。
でもK君は、落ち着いているときはとても覚えが早く、だれよりもできる子…です。発達障害という言葉には、私はいささか抵抗を感じました。もっとも私は発達障害を詳しく理解しているわけではなく、言葉のニュアンスから抵抗を感じただけですが…!
ご両親は二人とも優秀な大学出身です。2つ違いのお姉ちゃんもとても賢い子どもです。お母様も熱心でいつも子供2人を連れていろいろなところに出かけたり、たくさんの本を買い与えていました。
でもお父さんと子どもたちは,関わりが少なかったようです。子どもたちの話では、ご夫婦があまり仲良くなく,しょっちゅう怒鳴り合っている・・・と。お母様も離婚は子どもたちがいるから我慢している・・・と私に愚痴を言うこともありました。
だからK君は小さいころ「パパなんていらない」と言っていたこともありました。
小学生のK君
小学校になる時「K君、学校楽しみだね。」というと、「別に」という言葉が返ってきました。年長さんの子供は学校に入るころになると、たいていの子供はランドセルや机を買ってもらった話をしたり、「小学校になったら○○を頑張るの。…」と夢を抱き、希望に満ちています。
案の定、小学校に入ると「K君、お友達出来た?」と聞くと「友達はいない」という返事。「K君いつも学校で何しているの?」「何も…」。
小学2年の終わりに、K君のお父さんは単身赴任で遠くへ行ってしまいました。K君が荒れたのもこの頃が一番ひどくなっていった気がします。
それが小学校3年ぐらいから、学校の教室で椅子を投げたり、人の本を床にばらまいたり、そのたび2つ違い のお姉ちゃんが呼ばれ、プライドの高い彼女は弟のことで肩身が狭くなったとカリカリしています。
現在、5年生です。英語だけではなく勉強もしに教室へ週4日きます。
勉強はとてもできます。どの教科も得意で、なかなか解けないような問題も比較的、楽に解いています。私とは6年間の付き合いなので、私も激しくしかったこともあるので、比較的今はいうことを聞きます。
また○○がいやだから、学校は嫌いだ…、○○君というクラスメートがこんなことを言うので頭にくる…と自分の胸の内もチラホラと話すようになっています。スクールカウンセラーの先生は、「できるだけ話をさせて黙って聞いてあげて…」とアドバイスをしてくれています。
「中学へ行く頃が心配…」というお母さんに「そのうち落ち着きますよ。」と私は話しています。確信はないのですが、K君は確実に成長していると思っています。
実は最近、お父さんが単身赴任を終えて帰ってきたのです。なんとなく落ち着いてきたのもそのためかも・・・と思っています。
1-2.感情を表現できないとコントロールはできない!
感情をコントロールできなこどもは感情表現が短い
K君は、どの教科も良くできますが、話していて人の感情にあまり関心がないように感じることがあります。国語の物語文などが苦手だといっています。
最近は、自分のことも少しずつ話をしますが、小さい頃は「別に」「嫌い」「やりたくない」と言葉がとても短かったような気がします。それもとてもネがティブな言葉ばかりでした。
ゲームで負けて悔しいということを表現できず、カードや友達に八つ当たりをしていたように思います。いつも言うのは「むかつく」でした。きっとうまく表現ができなかったのかな…と今思うとそんな気がします。
快と不快から感情が発達
わたしには少し心を開いていますが、ほかの先生たちにはまだ無理です。ほかの先生たちもK君のことを気にかけて、声掛けをしてくれますが…なかなかうまくいきません。
最近、近くの幼稚園で「子供の心の発達」の講演会があり、ほかの講師たちと一緒に参加させてもらいました。私の子どもたちが通った幼稚園で,園長先生が招待してくれたのです。講演会の内容は、よく知られている赤ちゃんにある感情の快と不快についてからの話でした。
小さな赤ちゃんは、ミルクを飲んだり、おむつを替えてもらい、お母さんにだっこしてもらうなどを心地よいと感じるのが快の感情です。反対にひとりにされたり、おむつがぬれていたり、おなかをすかしている状態が不快です。
この2つの感情はやがて様々な感情に枝分かれして発達します。感情が発達する段階で、「おいしかったね」とか「よかったね」など…お母さんやお父さんの声がけなどでより複雑な感情に分化していきます。
つまり2つの感情の快と不快をより高度に発達させるためには、親子の関わりが大きく影響するそうです。幼稚園の年長ぐらいの年齢になると、高度な罪悪感や恥ずかしいという感情が理解できるようになるということでした。
しかし、最近は感情の分化、発達が著しく片寄っていることがあるそうです。親子の関わりの大切さを理解してもらいたいため、講演会が企画されたそうです。講演は近くの小児科の先生と園長先生が行いました。
親子関係が不安定だと感情の発達が遅れる
親子の会話が不安定だと、感情を言葉に表して共有することが少なくなります。特にネガティブな感情を表す表現がどのような感情を表すのかを理解しないまま成長します。
例えば,お友達に負けて嫌な思いしているとき、お母さんが「悔しかったね」と声をかけるとこのような思いを「悔しい」という言葉と感情がつながります。
子どもは、自分が感じる感情がどういうものなのかを分からず、モヤモヤすることがあります。親やまわりの人が「悲しいね」ということでモヤモヤした感情が「悲しい」と言うことを覚えます。
でもこのようなアドバイスがなければ,子どもは怒りや悲しみをコントロールできなくなります。そのため攻撃的になったり、泣きわめいたりするのです。
感情と言葉が結びつかない子どもは「やばい」とか「むかつく」という言葉を多く口にするそうです。しかし、2つの言葉の裏には「不安」「寂しい」「怒り」などの感情が隠されていることがあります。
2.感情がコントールできようになるには!
感情がうまくコントールできるようになるには、
- 感情を表す語彙を増やす
- 自分の感情に気付く
- 感情をアウトプットする
以上の3点が重要です。
2-1.感情を表す語彙を増やす!
乳幼児にはお母さんとの会話が大きく影響するようです。お母さんの話しかけで感情の快と不快を理解することから始まります。
ミルクを飲んで「美味しいね」、おむつが濡れて「気持ち悪いね」おむつを取り替えて「気持ちがいいね」・・・というようにその時の感情を声がけすることが大切です。
また、幼稚園に入ったころは子どもの話をよく聞く事が大切です。「先生がよくできたって言ってくれた」と子どもが言えば、「よかったね。ほめられてうれしかったね。」とお母さんが返してあげるとほめられた感情とうれしい感情がつながって身につきます。
また絵本を読んであげて、「かわいそうだね」「楽しそうだね」「面白いね」「怖いね」と感情表現をページを追いながら話しかけることで、子どもは絵本のイメージと言葉を結びつけていきます。
だから・・・スマホ育児では??と思います。感情が分からずキレる人間に育ってしまう危険があると思うのですが・・・!
小学生は,たくさん本を読むことが感情言葉を覚える勉強になると思います。小学生は、自分で本を読んで感情を理解できます。ただK君のように物語り文が苦手な子どもは、低学年のうちは親が一緒に本を読むといいかもしれません。
K君は本は好きですが、化学の本とかゲームの本をよく読んでいます。興味のあることに傾くのは仕方がないことかもしれませんが。
2-2.自分の感情に気付く
自分の感情や思いがなんだか分からないとモヤモヤします。しかし、自分の感情が「後悔」なのだ・・・自分の思いが「嫌な思い・・・不快」だと、自分の気持ちに気づき、その気持ちを表現することで、自分の感情を冷静に見つめることができます。
実際に自分の感情を言葉に置き換えることで、感情を抑えたり、冷静になれることがあるのです。
幼児のころは、親が子どもの様子をみて感情を表すことばで話しかけることができます。しかし、小学生も高学年になると親では計り知れない感情を抱くこともあります。そんな時、子どもは一人で自分の感情をコントロールしなければなりません。
自分を見つめて自分の感情に気付く事は、思春期に向けてもとても大切なプロセスだと思います。K君は、自分の感情を時々話してくれます。うれしいのは、最近ポジティブな感情を聞けるようになったことです。
小さいころは、全部否定・・・といってもいいくらいネガティブ発言が多かったのですが、最近はうれしかったという言葉も聞けるようになりました。やっぱり成長していると思います。
2-3.感情をアウトプットする!
感情をコントロールするには、はじめはネガティブな言葉も含めてアウトプットをすることが必要だと思います。声に出すことで自分でも気付かない感情に気付く事もあります。また、まわりの家族や学校の友だちも、気付かなかった人の気持ちを知ることにもなります。
そうしてこれは今してはダメなこと、今言ってもいいことと・・とだんだん区別が付いてきます。問題は心の奥にため込むことです。ため込んで爆発させ、とんでもないことをしてしまうより、普段から自分の感情をアウトプットする事で、感情をコントロールすることができるようになります。
最近、K君は学校や家での嫌なことを話してくれるようになりました。そんなとき私は、落ち着くようにできるだけポジティブな話題にすり替えていきます。すると・・・うれしかった話も聞けるようになってきたのです。
できるだけ「うれしかったの!すごいね」「みんなにほめられたの!かっこいいね!」「みんなびっくりしていたんじゃない」となるべくポジティブな言葉で話の相づちを打つようにしています。
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2-4.感情をコントロールさせるには叱ることも必要!?
K君は最近、自分の感情を話してくれるようになり、だいぶ落ち着いてきました。
とはいえ、機嫌の悪い日もあります。得意の算数で間違えるとブリントの間違いをえんぴつでぐちゃぐちゃと殴り書きしたり,時にはプリントをぐちゃぐちゃと丸めて教室の中で放り出してしまいます。
そんな時は、思い切り叱ることもあります。K君はそのときによるのですが、優しくしなければならないときと厳しく接した方が良い場合があります。
教室内のルールを破ったり、人に暴言や暴力を振るったとき、教材やプリントをぞんざいに扱った時などは、しっかり叱ります。頭のよい子なので,必ず叱る理由も話します。そのせいか、最近学校で椅子や机を投げなくなったとお母さんが言っていました。
ダメなものはダメ・・・の方が感情がよく伝わるのかもしれませんね。K君は、まだまだ大変なのですが、自分でもなんとかしようとしているようにも見えるので,長い目で見守りたいと思います。
3.まとめ
今回は、小さいころから関わった生徒のK君が感情をうまくコントロールできないのを見て、感情をコントロールすると言うことについて考えてみました。
子どもが感情コントロールできるようになるには、親子関係が最も大切だと思います。
K君は小さいころお父さんは嫌いだと言っていたのに,単身赴任でお父さんがいないときが一番荒れていました。でも帰ってきたら,とても穏やかになってきました。やっぱりお父さんが好きでお父さんと関わりたかったのかもしれません。
また、感情表現をする語彙を増やすことが大切だということをご紹介しました。
K君はゲームが好きで、ゲームを長時間やることを優先してあまり人と話をしたがらないようなのです。話すよりゲームがしたいのでしょうね。
これから少しゲームの時間が減り、話をするようになるといいなと思っています。これから思春期を迎えるK君ですが、感情をうまくコントロールできるように成長してほしいと願っています。
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